「痛いな…加減せずに噛んだだろう?」

彼が舌をペロッと出すと…紅い血液が、

じんわりと舌全体に滲むのが見えた…。

「急に強引な事をするからでしょう!?
力任せにあんなこと…信じられない!
覚悟を決めたら話そうと思ったのに!」

口の中に鉄の匂いが広がる…。

零れそうな涙をグッと堪えて彼を見る。

「隠したってどうせバレるのに!?
…気づかないフリをして待てと?」

蛍も…泣きそうな顔をしていた…。

拳を握りしめ、私を真っ直ぐ見つめる。

「違う、隠すつもりなんて無かった!」

「だが…ここまでしなければ、
大事な事は濁して話さないだろう?」

核心を突かれたようでゾクリとした。

彼は自嘲気味に笑っていた。

「もういい。今はどんなに話しても、
意味がない…この話はまた後日。」

彼は私の横を通り過ぎると扉を開け、

さっさと教室を出て行ってしまった。

無機質な教室に立ちすくむばかりで、

私はしばらく動けなかった…。

ボタボタと瞳からとめどなく水が零れ、

後悔の波が押し寄せる…時は戻らない。

私は目元を袖でグイッと拭うと、

ムワッと湿度の高い廊下を走り抜けた。