サドは私から視線を逸らさずに、

つらつらと話をしていた…。

「最後に…舌にピアスをつけた生徒、
放課後、音楽準備室に来てください。
では、僕からの挨拶は以上です。」

周囲がざわつく…当たり前だ。

舌のピアスをつけた生徒を、

挨拶の時点でマークしてるとか…。

先生達ですら顔を引きつらせてる。

いいぞ、その調子でクビになれ!!

「あの人…教師だったんだな。」

「…え?」

HRが終わり、人のいない教室。

蛍の声が妙に大きく聞こえた…。

「すれ違った男、気にしてただろう?」

「あぁー、うん…。」

私はスクールバッグを肩にかけて、

持ち手をぎゅっと握りしめた。

「今日、用事あるから一緒に帰れない。
ごめんね…また今度一緒に帰ろう!」

「待って、舌…見せて。」

教室を出ようとした私の手首を掴む蛍。

心臓がバクバクと音をたてる…。

振り返ることができずにただ固まる。

「…何、あの教師には見せられて、
俺には見せられないってことか?」

「ちがっ、なんで…?」

蛍は呆れたように笑った。

「動揺しすぎ、馬鹿にしてるのか?
気が付かないわけがないだろう。」