突然、得体の知れない恐怖が襲いかかった。少年が不気味なほど澄んだ瞳で、視線をずらし、川を見つめる。
「きれい……」
川は何も変わらず同じ速度で流れ続ける。時間もそう。
マコトだけが、つまずいて取り残された川の中の石のように、丸く、丸くうずくまっていた。
「本当、なんだ……」
震えながら笑みを浮かべた少年に、気持ち悪い、と思った瞬間、そいつは鞄を抱きかかえ、ぺこりと頭を下げて駆けて行った。
何が起きたか理解できない重たい頭をぐらつかせながら、慌ててマコトの背中を揺さぶった。
マコトが振り返ってこっちを見上げる。
余裕の笑顔が、夕焼けを浴びて真っ赤に照らされた。