「史さんっ!おはよう!何考えてるの?」

この声は……

「おはよう冴木。…別に大した事じゃないから…」

アタシは無難にそう返しといた。

「そう?でも、考え事ばっかしたらシワが増えちゃうよ?」

………シワが、増えちゃう………

「え、待って初めて聞いたんだけど」

「あ、あれ?そうだっけ?言わない?考え事したらシワが増える…って」

冴木はキョドキョドしながら頭の上に大きなハテナマークを浮かべている。

待って、可愛すぎない?

他の女子の気持ち、めっちゃ分かるわ。

「冴木くんめっちゃかわいいっ!」
廊下を歩けば黄色い歓声が上がる。

「ひゃんっ」
「冴木くん、驚いた声まで可愛いとか反則!」
虫が入ってきた時の驚き声でさえ女子のハートを鷲掴みにする。

恐らく、この学校1のモテ男子だろう。
学校1のモテ女子はありいかな。

冴木は、すごい。

"可愛い"と言われることになんの抵抗も示してない。

「史さーん?考え事したらシワが増えちゃうよ?」 

「それ、さっきも聞いた」

「……危ないじゃん。考え事に夢中で何かにぶつかって怪我したら。女の子なのに」