そんな可愛らしく話す日奈子さんに、私は苦笑しつつ返事をする。

 「私も、もうアラサーになったんです。一人でもちゃんと生活出来てますから。おかあさんは、自分の時間をもっと楽しんで?」

 そんな私の返事に、遅れてやってきた兄浩太郎は同じく苦笑を浮かべて援護射撃をしてくれる。

 「ずっと実家暮らしじゃ、茉奈花に彼氏だって出来ないだろう? もう、いい大人なんだからこの先困らないように見守るもの、親なんじゃないか?」

 浩太郎兄さんの言葉に、首がもげそうなほどに縦に振って同意を示す私に、お兄ちゃんと希代美さんはニコニコと言う。

 「俺たちみたいに、茉奈花にも幸せになってほしいしな」

 兄よ、産まれてからこの歳まで彼氏もいたことのない人に、結婚という高ハードルを持ち出したわね。
 結婚だけが幸せとは思わないけれど、沙希ちゃんを見てると、自分の子ってどんな感じだろうとは思う。

 でもね、恋愛経験なしのアラサーにいきなり結婚を突きつけちゃダメだと思うのよ……。
 彼氏がいたことがないことも知っているはずなのに、浩太郎兄さんは時々無茶振りをする。

 確かに、今年で二十七歳。
 数少ない友人たちも、結婚したり、予定が出来たりといった連絡も来ている。
 まずは彼氏を作らないと話が進まないのだが、いかんせん……。
 小学校や中学校時代にからかわれたり、親無しなどと言われたりで嫌な思いをしてから、異性を遠ざけてしまったからなぁ……。

ついつい、遠い目になってしまうのも致し方ないと思ってほしい。