急遽と言わざるおえない速さで決まった結婚式に向けて一気に忙しくなった。
招くゲストこそ少ないものの、衣装や食事に引き出物、飾りつけなどなど、決めることが多くてきりがないといった感じ。
しかも、それを会社役員という忙しい肩書を持つ相手が嬉々として率先して準備を進めているのだ。
私はそれを、手伝ったりすることの方が多い。
決断するとなると、悩みだして私は止まってしまうので、これ!と決めてくれる雅貴さんは頼りになるのだった。
そんな中で、一番悩んだのはドレスだった。
しかし、そこにも救世主が現れたのだ。
それはお母さんだった。
「茉奈花、これを今風にアレンジしてもらって着たらいいんじゃないかしら?」
そう言って、ドレスの試着に一緒に来た母は持ってきていた荷物をドレスサロンのスタッフに差し出していた。
取り出されたドレスは、綺麗なAラインのドレスで胸の下に切り替えが入っている。
シンプルだけれど、生地もレースもよほどいいものを使っているようで綺麗な光沢と相まって落ち着いた雰囲気のドレスにすっかり目を奪われた。
「お母さん、これどうしたの?」
思わず聞いた私にお母さんは言った。
「これはあなたのお母さん、里美さんの物よ。 いつか娘が着てくれたらって願って取っておくんだって聞いていたから、その時のためにずっと手元に残していたのよ」
あぁ、これもあまり記憶に残っていない父と母の思い出の品なんだなと、また違った気持ちでドレスを見つめてしまう。
ここで見ていたドレスとは違う、母が着たドレス。
「せっかく見に来たのに、私もうこのドレスしか目に入らない」
そんな私の言葉に、ドレスサロンのオーナーさんはにこやかに言った。
「ではこちらに合う小物と装飾品を決めましょう。 懐かしいわ、このドレスもうちのだったんです。 あなたのお母様が気に入って買い取ってくださってね。 これを着た時には、新婦さまがお腹の中に居たんだそうですよ」
そんなドレスサロンのオーナーさんの声に驚いた。
「これもここのお品だったんですね。縁、なんですね。これ、私に合うように少し手を入れてもらいうことは出来ますか?」
私の問いに、オーナーさんは快くできると答えて請け負ってくださったのだった。