その日、雅貴さんも早めに帰宅して久しぶりに一緒に晩御飯を食べているとき、昼間の話をすることにした。

 「今日、病院に小宮山さんがいて少しお話しました」

 その私の言葉に雅貴さんが、目を見開いて驚いている。
 
 「なにか言われた?」

少し表情を険しくして私に聞いてきた雅貴さんに、私は苦笑して言葉を返す。


「彼女、義姉の患者さんだったみたいです。診察の終わったところにお会いして、ここに居るんだから、察して別れてくれますよね?と言われました」


私の言葉に雅貴さんは絶句。

そして弾かれるように椅子から立ち上がると、私の傍に来てギュッと抱きしめてきた。


「小宮山さんと、そんなことにはなったことは無い。しかも、久しぶりに会ったのはこの間茉奈花ちゃんと散歩した時だ」


声に滲む真剣さに、それが真実だと信じられた。

「私は、本人の口から聞きますと返しましたよ。そして、義姉の事と私の名刺をお渡ししました」

ニコッと笑顔で返す私に、雅貴さんはようやく腕を緩めて顔を見るとホッとした表情を浮かべた。


「茉奈花ちゃん、結構しっかりしてる。しかも、さりげなく反撃もしたね?」


クスリと笑いながら言う雅貴さんに、私は苦笑いを浮かべて返す。

「だってこの間のこともあって、言われっぱなしも嫌だなと思って」


そんな私の返事に、雅貴さんは聞いてきた。

「どうして嫌だと思ったの?」