お昼を少し過ぎた時間になって、私たちはモールから少し離れたところにある昔からの商店街の方に足を延ばした。

 この商店街は、私が住んでいたアパートに近く、ベリーヒルズの雰囲気とはまた違った庶民的で落ち着く雰囲気だ。

 そんな商店街のお蕎麦屋さんに行き、引っ越し蕎麦となったのだが、私は現在目の前の人の食べっぷりに圧倒されている。

 私は鴨南蛮そばを頼んだのだが、雅貴さんは天ぷらそばにカツ丼を付けて、さらに唐揚げまで頼んでいた。
 その目の前の料理が、吸い込まれるように食べられていく様子は圧巻の一言で、浩太郎兄さんが高校の時でも、ここまでは食べてなかったかもと思うと、こんなに食べるのに体型がスリムなのはなんでだといった感想にいきつく。

 「ん? 茉奈花ちゃん、食べないと伸びるよ?」

 「あぁ、そうですね。 それにしても、雅貴さん。よく、食べますね?」

 私の言葉に、雅貴さんは少し恥ずかしそうにしつつ、教えてくれた。

 「僕ね、食べるのが好きだし、どうも胃下垂みたいで食べても満腹感が少な目で、つい沢山食べちゃうんだよね」

 食べ過ぎても太らないって、うらやましいのですが?

 「あ、でも体型維持のために週に二日はジムに行って運動しているよ。専属のトレーナーさんにメニュー組んでもらって、効率的にトレーニングしてるんだ」

 あ、太らないわけじゃないんだね。
 食べても太らない人はいるけれど、体型維持を気にしているのならこの体型は、本人の努力の結果だ。
 しっかり自己管理出来ているってことだもんね、すごいな。
 ここに来て、雅貴さんの良いところに気づいたりして、確かに一緒に過ごす時間が相互理解に繋がることは、なんとなく理解できたのだった。