キッチンには予測した通り、食器や、残っていた調味料や乾物等を入れたものがあり、出しては収納へとしまっていると、後ろから声がかかる。

 「もう、自分の部屋は終わったの?」

 そう聞いてきた雅貴さんは、まだ段ボール2箱を抱えて移動中。

 「それはどちらに?」

 「これは仕事の物だから、書斎に持って行くところ」

 なるほど、家でも仕事をするタイプね。
 これは、伯父さまや兄さんに似ている。仕事人間タイプだ。

 「それを片付けたら一旦休憩しましょう? そろそろお昼になりますし」

 私の言葉に、雅貴さんは時計を確認して頷いた。

 「あぁ、もうそんな時間だね。すぐに片付けてくるから、少し待っててくれる?」

 「はい」

 そんなやり取りの十五分後には、雅貴さんは再びキッチンへと顔を見せた。

 「お疲れ様です。これ、飲んで少し休んでからご飯にしましょう」

 差し出したのは、到着していて出されていたマシンで入れたコーヒー。
 香りが良いのは、きっと豆が良いのだろう。

 私は香りを楽しみつつ、頂くと雅貴さんもダイニングの椅子に座って飲み始めた。

 「うん、美味しいね」
 
 「機械が良いですから」

 「人が入れてくれるのは美味しいよ。特に意中の相手なら、なおさらね」

 ニコッと笑う姿は、やはり眩しくて対面にいるのに私はまだ直視できず、視線を逸らして、そうですか……と返したのだった。