そんな話は全く聞いていなかった私は、盛大なため息とともに言えたのは。

 「聞いてません!」

 と言う一言だった。

 話を聞けば、実家と兄夫婦の部屋の一つ上の階に空き部屋があり、サクッと購入してしまったらしい。

 それまで帰国から四か月ほどはどうしていたのか聞くと、ベリーヒルズのホテル住まいだったという。
 あのビルにエアースカイの本社があるので、そこで仕事をしているし、移動が楽だからとホテル住まい……。
 さすが御曹司、やることが違う……。

 そんな彼が、お見合いして結婚したいと言い出したら行動も早かった。
 さすがは大企業で役員として働くだけあり、物事の決断力と行動力はこんな私的部分でも発揮されたらしく、話を通して両家に同棲の許可を得て物件までおさえてきたと……。

 まさかの、お見合いから一週間で同棲のための引っ越し準備がほぼ整うって、物事のスピードが速すぎやしませんか……。

 なんだか、話の流れの速さにぐったりしてしまうと、雅貴さんは私の顔を覗き込んで様子を伺ってくる。

 「嫌だったかな? でも、お互い仕事も持ってて忙しいとなると、知り合うための時間を作るのも大変だと思って。それなら、一緒に住んだら、知り合う時間が増えると思ったんだ」

 シュンとしょげるイケメン……。
 この人、自分の使い方分かってる気がしてならない……。

 「えぇ、まぁ。 一緒に住むのは互いを知りあうには効率的かもしれませんね……。でも、まず相手に意見を聞きましょう?」

 そんな私の一言には、あぁうっかりって顔をして雅貴さんはごめんと言いました。

 とりあえず、大きな家具だけ決めました。
 引っ越しは二週間後だそうです……。