そんな遺言があったことは知らなかった私は、驚いた。
私の両親は好きなことを仕事にして、最後まで頑張っていたことは分かったし、私のことも気にかけていてくれたのだと思えると、少し気持ちが和らぐような感じがした。
「本当はもっと早く、会って伝えたかったのだけれど」
そう、申し訳なさそうに言う雅貴さんは、大学はアメリカの有名な経済学部を卒業し、そのままエアースカイのアメリカ支社で働いていたという。
今年の春、ようやく専務に就き日本へと帰国したという。
それまでは年に数日しか、日本には帰国していなかったのだとか。
なかなか、多忙な生活を送っているようだ。
「最近落ち着いてきて久しぶりに浩太郎に会ったんだ。 その時に、君がどうしているのか聞いたら、独り立ちしたと。 でも、彼氏も結婚もまだそうだと聞いたとき、僕ではダメかな?と思って今回の話を持ち掛けたんだ」
さわやかに言ってるけれど、なんかゾクゾクするのは気のせいですか?
なんだろう、両親のことは気に掛けなくていいので、どうぞ他を当たってくださいと言いたくなるような……。
「実は、中学に上がるころから少しづつ茉奈花ちゃんのことは浩太郎から聞いていたし、茉奈花ちゃんが中学生になる前には一度浩太郎と一緒の時に会っていたんだけど。覚えてないかな?」
これだけの美形、忘れそうにないのだけれど。
浩太郎兄さんの周りはみんな美形だらけで、逆に覚えていないともいえる。
美形の周りには美形が集まるのだろうか。
浩太郎兄さんも身内のひいき目抜きで、日本的和風顔な快活さのある美形だ。
背も高いし、顔もいいと思う。
しかし、この一ノ宮さんはそんな集団の中ではずば抜けて美形なはずなのだ。