「たまたま用事でもあったのかな？」

そんなことを思いながら圭介は歩いていく。その時、「お前のせいで！！」と怒鳴り声が遠くから聞こえてきた。義彦のものだ。圭介は急いで声のした方へ向かう。

そこには、顔を真っ赤にして怒る義彦がいた。彼に睨み付けられているのは蘭だ。しかし、表情を変えることなく義彦を見つめている。圭介は車の陰に隠れ、様子を伺うことにした。

「お前のせいで、訴えられることになったんだ！！親戚の笑い者になってしまう！！どうしてくれるんだ！！」

怒り狂う義彦に対し、蘭は淡々と答える。

「私たちは真実を話しただけです。ご遺体や事故現場は真実しか語りません。私たちが生きている誰かの名誉のために嘘をつくことは許されません」

「ッ！ふざけるな！！」

蘭は義彦に胸ぐらを掴まれる。圭介は飛び出そうとしたが、蘭と一瞬目が合った。その刹那に「そこから動くな」と言われたような気がして体が動かなくなってしまう。