「おわっ!」

「ぎゃ、ごめんなさ──ぐぇ」



わたしと、風間くん。

ふたり絡まって、なだれ込むように、床へ。


ドタン、と鈍い音がした。


でも……体はあんまり痛くない。

そう、風間くんがわたしの下敷きになっているから。


一瞬で背中が凍った。



「ごめんなさい風間くん大丈夫ですかっ!?」

「……ああ」


風間くんが上体を起こして……


「ぜんぜん、大丈──ん、」


──ふに、と。唇に柔らかい感触。



………え、?


至近距離すぎてぼやける視界の中で、風間くんの目が見開かれるのがわかった。


わたしの唇……が、風間くんの、唇に限りなく近いほっぺたに当たって、いる。


う、そ……。


静まり返った教室に、みんなの、声にならない悲鳴がわき起こる。


そんな静寂を打ち破ったのは


──ガラガラガラ……。


今日も今日とて重役出勤してきた綾川星くんが、教室に入ってくる音だった。