「ふはは、意外。黒鐘さんてそんな素早い動きもできるんだ」

「っ、〜ぅあ、これは、街で差し出されたから受け取っただけでっ、ティッシュって消耗品だから役に立つし、断じていかがわしい出会いを求めてるわけじゃ……」



誤解されまいと必死に弁解するのに、風間くんの笑い方はますます豪快になっていく。



「えっと、あの、ほんとだよ……アプリもインストールしたりしてないし……」

「っく、あははっ、大丈夫そこは疑ってないから。黒鐘さんて大人しいと思ってたけど、すごい面白いね」


きらーんて感じの爽やか笑顔が炸裂してる。

なんかよくわからないけど、褒められたからいっか……。


「それじゃあ」と風間くんに会釈をして、踵を返した……矢先に。



──ドン!と誰かに勢いよくぶつかられた。


ひえっ?


「わっ!? 咲綾ちゃんごめん!」


誰かの焦った声が響く中、わたしの体は床に倒れていく。

バランスを保とうと足を引いたら、あろうことか──風間くんの足にもつれてしまった。