「はーちゃん、見てたの?」
「図書館から教室に戻る途中で、偶然見かけただけ。別に盗み見とかじゃないから勘違いしないで」
「その言い方だと、盗み見を肯定してるように聞こえちゃうよ?」
言われてみれば、そうかも。
余計な言葉を付け足すんじゃなかった…。
恥ずかしさを紛らわすために、今度は大げさに咳払いをした。
「それで、先輩とどんな話をしてたの?」
「へぇ、気になるんだ?」
「気になるっていうか、颯己が女の子と楽しそうに話してるところって見たことないから珍しいなと思って」
「……なるほどね」
今の言い方、意味ありげに聞こえたのは気のせい?
考えすぎかな…?
少し沈黙の時間が流れた後、颯己は首を傾げた。
「っていうか、あの時の俺って笑った覚えは全くないんだけど、楽しそうに見えた?」
「颯己は後ろ姿しか見てないけど、霧島先輩が嬉しそうに笑ってたから、てっきり良い感じの雰囲気なのかと…」
「俺はずっと無表情だったと思うよ。早く話を終わりにしてくれってイライラしてたから」
二人とも楽しくお喋りしてたわけじゃないのか。
なんだ、そっか…。