「ねぇ、もしかして別のシャンプーに変えた?」
「うん。今まで使ってたのが終わったから、帰りにドラッグストアに寄ってきたんだけど、前のやつが生産終了になったみたい。だから新しいのにしてみた」
買い物ってシャンプーのことだったのか。
「前と似たような香りのシャンプーを選んだつもりなんだけど、よく気付いたね」
「ものすごく敏感ってわけじゃないけど、鼻は利く方だから」
言葉を返すと、颯己からフッと笑う声が聞こえてきた。
「そうじゃなくて、俺が今まで使ってたシャンプーの香りを把握してくれてたんだなって思って。ささやかな変化に気付いてもらえるのは嬉しい」
こちらに振り向いて頬を緩める颯己。
目が合った瞬間に顔がジワリと熱くなった。
「そ、そりゃあ……同居するようになってから颯己の傍に居る時間が増えたんだもん。嫌でも気付くわよ」
「ふーん?」
「気が散るから前向いて」
語気を強めると、颯己は何故かニヤリと笑って正面に向き直った。