「……仕方ない。今日だけ特別だからね」
「ほんと?」
「ほら、そこに座って」
素っ気ない声と共にラグマットを指差す。
「ありがとう、はーちゃん」
語尾を弾ませながら座る颯己。
満面の笑顔だし、上機嫌って感じ。
ただ髪を乾かすだけなのに、そこまで喜ぶことなの…?
不思議に思いながらドライヤーを用意した私は、颯己の背後にまわった。
「じゃあ、始めるから」
「うん」
膝立ちでドライヤーをあてていく。
小学生の時は、殆ど同じぐらいの背格好だったのに。
こんなに体格差がつくなんて、あの頃は考えてもいなかったな…。
「はーちゃんの手ぐし心地いいね。眠くなりそう」
「寝るんだったら自分で乾かして」
「大丈夫。ちゃんと起きてるから」
とか言いながら、次第に瞼が重くなっていくんじゃないの?
ウトウトし始めたら叩き起こそう。
そう思っていると、シャンプーの香りがフワッと鼻を掠めた。
あれ?
この香り……。