『ねぇお母さん──柚葉はどこ?まだ帰ってこないの?』

何回も何回も聞いたけど、

『お母さんそんな子知らないわよ?』

『水葉は生まれた時から1人っ子だよ。もしかして妹とかお姉ちゃんが欲しかったのか?』

そう言って、私は1人っ子だってとぼけたの。

私は時が流れるにつれてその頃の記憶は薄れていって、中学生になる頃には──1人っ子だって思って、お母さんにもお父さんにも何も聞かなくなった。

でもあの時──小倉山に迷い込んで柚葉と出会った時、姿を見た瞬間に声の主だってわかったの。

どうしてか、その時はわからなかった。

でも──私も柚葉に心臓を抜かれて死んでから幽霊になって、柚葉とたくさんお話する度に頭痛がするようになって。