「しょうちゃんがいるから大丈夫だよ」



そう彼女は言ったけど、なにも分かってない。



これだけ満員だと痴漢なんてたくさんいるだろうし、痴漢されてることに僕が気づけないかもしれない。


それよりも二十分間ずっと手の届くところにいれるとは限らない。



何かあったとき僕が助けられなかったら、どうするんだよ。






「荷物かして。そっちでつり革掴んで、こっちで僕の腕掴んでて」


一駅目に止まって乗客が入れ替わるその隙に、僕はすばやく彼女の鞄を手に取った。