「すみません!急患です!」

病院内がざわついた。

血塗れの少女を抱えた、男がいきなり訪ねてきたらそうもなるだろう。

でも、流石は医者で、事前に電話していたこともあり、すぐにストレッチャーを用意し、診察を始めてくれた。

「もう少し丁寧に診察したいが……それよりも血液が最優先だ。君、この子の血液型、わかる?」

「……すみません、わかりません」

スマホにも目をやるが、琥珀からの通知はない。

「手術歴は?」

「分かりませんが、持病に拡張型心筋症を持っています」

「そうか……」

医者は唇をかむ。

何か、何か手は。

非力さを痛感し、拳を握りしめた。

彼女の今にも消えていなくなりそうな弱々しい雰囲気に焦り、思考が妨げられる。

「それなら」

荒々しい息で掠れている声、でも、聞き覚えがある、どころじゃない。

「俺の血を使ってください」

……汗まみれの、琥珀、だった。

「君、この子と血液型一緒?」

「わかりません。でも」

そこで俺は、重要なことを思い出す。

そうだ、琥珀は……。

「俺、黄金の血、なんで」

苦しそうに、無理矢理笑った琥珀は、とんでもなく悪の顔に歪んでいた。