***

「見つかったか!?」

「いや、全くだ」

「私もです」

「くそぉ……!」

自身の本来の髪に指を差し込む。

自分のせいで、1人の少女を行方不明にさせてしまった、その罪の意識で脳内が蝕まれ、冷静な判断が下せる自信がない。

もう辺りは闇の中だ、事故に遭っているのなら誰かが通報しているはず。

でも、交番にそのような情報は入っていないらしい。

あの子は、どこへ――。


「遥斗は!?」

「まだ来ていないとのことです」

「どこ行ったんだよ、天藍ちゃん……!」

今は自分を責めて反省している暇などない、冷静に考えて、分析しろ。

僕じゃなくて、お前なら。

お前ならできるだろ、流旗知成。

「……水城さん、天藍ちゃんは持病があるんでしたよね。病名、わかりますか?」

「拡張型心筋症です。症状は中程度」

「心臓病ですね……。普段の様子は?」  

「すみません、私はいつも櫻子さんにお付きしているので……」 

糸目と動かない表情筋で人間的でない返答をする水城さんに苛ついてしまう。

怒っても何も変わらないのに。

自分が悪いことを、隠そうとして人にぶつかっている弱いやつなのだろう、橘瑠璃は。

「学校の様子で十分か」

いつもは冷徹に聞こえる声が、今は凛としていて頼もしかった。

「……ああ」

琥珀が俺の意図を理解してくれたようで、ハキハキと答えてくれる。

「少しの運動で息切れの様子が見受けられる。学校ではエレベーターを使用、体育は休んでいる。入退院を繰り返し、少し前退院したばかりだ」

今、琥珀と水城さんと回ってきた道で、如月総合病院に繋がる道、そして点検していない道をピックアップする。

そして、天藍ちゃんの今の状態から考えて全力疾走が続く距離は大体……。

その距離の範囲内にあり、人目に付きにくい道路は……。

「……出た」

……さっき通り過ぎたあの狭い横断歩道辺りだ。

「走れ!!」

***

油断すれば飲み込まれてしまいそうな闇を、スマホのライトで切り裂く。

……この辺りなのだが。

「おい!如月!?おい、しっかりしろ!」

琥珀の切羽詰まった声に足が動く。

「天藍ちゃん!」

「天藍さんっ」

スマホのライトで照らされたその少女は、頬が青白く、周りにはその少女を呪うように赤黒い血が粘り付いている。