「ああ、あれね。それは、母親からの情報よ。櫻子は旦那が私に千稲ちゃんのことをバラしたと知って、白状してくれた。私の本当の母のことも。つまり、ここで私に入ってきた情報は千稲ちゃんは私の本当の母のクローン、そしてその母というのはタチバナコアイという女性ということ。言い訳みたくなるけど、橘くんたちのことは本当に何も知らなかった」

俺らの両親が同じだったことや、俺がクローンだということなどは一緒に調査していくうちに俺らと同じタイミングで知ったという訳か。

「そこで橘恋藍の写真も見せられたし、私を預かった理由も聞かされた。橘恋藍と自分は親友で、恋藍が余命宣告を受けたとき、娘を頼んだわよ、ってまるで最期のお願いをしてるみたいだったって母が言ってたわ。瑠璃さんが家に来たとき、恋藍の写真を見られたから色々勘付かれるかと思ってヒヤヒヤしてたけど、意外と大丈夫だったわ」

どうしてこういうとこで鈍さを発揮するかね、と項垂れる。

「橘恋藍と俺らの繋がりを知ったのはいつだ?」

「母の部屋に侵入して、色々見てから。リスクはあったけど、確かめずにはいられなかった。だから、聞いたでしょ?橘恋藍は貴方達の母親かっ、て。父親は、珊瑚かっ、てね」

それが失敗だったと思っているように掠れた声には悲しげな色が混じっていた。

「そして……これらの秘密に俺らが辿り着けないように、高田がクローンであるかもしれない、なんて虚偽の可能性を示唆して俺らをミスリードした。xなんて怪しい人物にも化けてな。水樹さんとグルなんだろ?」

「当たってるわ。でも何で水樹さんとグルってわかったの?」

「二人の電話の奥でなってた鹿威しだよ。一度なってから次なるまでの間隔が同じだった。xの電話にも鹿威しがなってたみたいだしな」

「ふーん、そういうことね」