このとき、天藍姉と姉弟だと言ってないから俺達の繋がりは知らなかっただろうけど、後々、お互いのことを深めていったたんだよ。

「へぇー……」
 
自分から聞いたくせに、促音が棒である。

「花火大会、行きたいの?」

「え」

天藍姉はクールさを崩し、子供のように目を見開いてこちらを見た。

驚きと期待の混じるその視線はあどけなく、我が姉と思えないほどに無邪気だった。

「俺が来たときに咄嗟に隠したのかもしれないけど、みかん食べるときに布団からちょっと覗いたぜ、花火大会のチラシ。あの安っぽいフォントはもうそれだろ?」

俺はちょっと得意になって、クールに格好よく、それこそ天藍姉みたいに決めようとしたが、嬉しくて頬の表情筋がぴくぴくと痙攣を起こす。

俺は頭がいいとか、大人っぽいとか言われるが、天藍姉に比べればまだまだだ。

天藍姉は凄い推察力、洞察力、思考力を兼ね備えているのに、全力を出さない。

天藍姉にとって、それが普通なのだ。

幼少期からそれを見てきた俺は真似をしようとしているだけ。

「別に見てるだけならただ持っててもいい。だけどそれを隠すってことは、恥ずかしい思いをしたくないから。プライドの高い天藍姉ならありえる。つまり、ずっと見てた訳だな」

天藍姉は何も悪いことはしていないのに、バツが悪そうに顔を背けた。

だが、隠しきれなかった白い首筋と耳周りははっきりと赤い。

琥珀兄に似てんな、と思った。

「あと……これは憶測だけど、天藍姉の体調のこと考えると、あんま花火大会行ったことないんじゃねぇか、と」

俺はばあちゃんに勉強漬けにされてて、よくわからなかったのだ。

家の中でしか、姉とは殆ど関わらなかったし。

天藍姉の赤みが引いていく。

白樺のように、真っ白だ。

まずいことを言ったかもしれない、と生唾を飲む。

「さぁ、どうでしょうね」

姉は美しく妖しく、少し哀しげな微笑を浮かべた。