真っ白な床、壁、天井、ベット、そして私。
乱れた髪を整えることもせず、白く、独特な臭いのする布団に埋もれていた。
また閉じ込められた、消毒液の臭いで包まれたこの白い籠城に。
左胸のあたりをぎゅっ、と力いっぱい握ると、どんどん成長していく私の心臓が意思を持った生き物のようにうねり、私を乗っ取ろうとしているような気がした。
慣れているはずなのに、いつものことなのに、どうしてか、瞳から水が滴っている。
死ぬかもしれないから?
この期に及んでそれはないだろう。
死ぬことなんて怖くない、そう思っているはずなのに、思いたいのに。
別の強い感情が扉を開け、と内側から今にも突き破りそうな勢いで戸口を叩いている。
やめて、出てこないで。
秘密は、きっと母が守ってくれる、だから、私は。
橘くんさえ、真相を見つけなければいいのよ。
例え、私が、死んだとしても。
「あはは……」
狂気を孕んだ笑いが、私しかいない病室に、ゆっくりと溶けていった。