何もできなかった。

ドォン、ドォンという轟音と閃光が背後で炸裂していたのを感じていた。

そのときに、隠し撮りでもされたのだろう、如月の写真に写っていた男児は、俺だ。

だから、俺は如月に対して、2度、何もできなかったのだ。

久し振りに出会えたのは運命なのかとさえ疑った。

しかし、彼女は、弱かった。

儚い雰囲気が全身に漂っていた。

彼女の強さが、消えた。

俺は、彼女の言葉をもらってから、ずっと、ずっと。

強く、凛として美しい如月のことを――。

なのに。

馬鹿だ、俺は。

自分の不幸ばっかり嘆いて、人にぶつけて、他人の不幸を分かち合おうとしない、馬鹿野郎。

俺の黒と、如月の白が対等なわけがない。

俺の黒と如月の白が交わっても、灰色にはならない、だって?

そんなはず、ないだろう。

虚勢を張ってばかりの黒と、どんなときも清らかで隠さない白の、どこが対等なんだ。

俺の黒は、如月の白を汚してしまうだろう。

そして、斑に灰色になるんだ。

はっきりとしない、ぼんやりとした輪郭で。

だから、交わってはならない。

彼女の清純な白を、言葉とは裏腹に弱く儚い所を、影から守る。

それが、汚れた黒の役目だ。