すると、黙り込んでいた橘くんが割って入ってきた。
「その写真ってさぁ、如月のお母さんと二人だけで写ってたの」
「ううん……何人かいて、何かの集合写真みたいだったわ」
「じゃあさ、如月のお母さんは写真に何か書き込んだりする人?」
「多分、しないわね。その写真にも何も書かれてなかったし」
ついサクサク回答してしまったが、意図が全く読めず怪訝に思う。
何でそんなことを聞くの、と尋ねようとして、その前に瑠璃さんが話し始めたのでタイミングを失ってしまった。
「天藍ちゃんと、僕らの母って、病気、一緒だよね?」
瑠璃さんが顎に褐色に染まったたくましい指を添え、眉根を寄せて言う。
「そうですね」
私が何気なく相槌を打つと、瑠璃さんは更に深く眉間にシワを刻み、瞳には張り裂けそうなほど切ない光が瞬いていた。
「……僕、1個推理あるんだけど、言ってもいい?」
「んじゃ、聞かせろよ。てめぇの推理」
瑠璃さんはいつもより低く安定感のある太い声で話し始めた。
「まず、僕の父と天藍ちゃんのお母さんが知り合いなのは、僕の母を通じてだと仮定する。ちょっと省略するために名前で推理していくね」
無理矢理笑ったような顔が、胸に痛かった。
「実は、恋藍も珊瑚と櫻子と同業者だったらしいんだ。酒で酔わせたら、珊瑚がいつか言っていた。恋藍は持病の悪化でそれを引退した。病気の治療に専念したんだ。亡くなったのは僕が3才、琥珀は2才ときだったらしい」