言い切ったあとは、風のならす音、そしてすすり泣く音しかしなかった。

瑠璃だろう。

俺の話を聞くと泣いてしまうと思ったから、急いでドアの外に出ていったのだろう。

多分、ドアにもたれかかって泣いているはずだ。

アイツにも、何年も辛い思いをさせた。
  
俺が生まれたせいで。

そして、これからもそういう思いをさせていくのだと思うと死んでしまいたかった。

如月は下を向いているのと、長い前髪のせいでどんな表情をしているのか、わからない。

この秘密を知っているのは、俺の身内と、研究者の大人達、如月病院の一部の人間と高田。

そして、いつかの少女と如月だけだ。

自分から話したのは、如月が初めてだった。

少女は、俺がクローンだと悟り、泣きじゃくりながら近所の公園にいたところに来て、話を聞いて慰めてくれた。

そして、その少女は顔は覚えていないがおそらく――。

ふわり。

柔らかくて温かいものが俺を包んだ。

「大丈夫だよ」

はっ、と目を見開く。

「橘くんは、橘くんよ。君しかいないから」

……大丈夫。君は、君だからね。

「橘くんを必要としてる人は、すぐ側にいるから、だから、死にたいとか、要らない人間だとから、自分を卑下しないで。私には、君が必要なのよ」

……間違っててもいいから、自分を持っていて。君を必要としている人は、すぐ側にいるから。

ああ、もう。

「泣きなさいよ」

言われなくても既に――。

彼女の急激な温かみに、溺れ、彼女の服を濡らした。