「なに遠慮してるの。
早く入らないと、もっとびしょ濡れになってしまう」
太鳳くんと相合傘。
そのことに躊躇していると。
太鳳くんが私の方に歩いてきて。
私の腕をやさしく掴み。
太鳳くんの方に引き寄せた。
その勢いで。
太鳳くんの胸に飛び込むかたちとなった。
太鳳くんの胸の中。
そこにいることが。
ものすごくドキドキして……。
雨音が大きいのに。
心音が。
聞こえてしまいそう。
太鳳くんに。
「あっ……ありがとう、太鳳くん」
激しい胸の鼓動。
それをなるべく落ち着かせようとしながら太鳳くんにお礼を言った。
「そんなこといいよ」
太鳳くんはそう言って私からやさしく少しだけ離れた。
「彩音は家に帰るんだよね?」
「うん」
「俺も。
じゃあ、行こうか」
「うん」
こうして。
私と太鳳くんは一つの傘の中に入り一緒に帰った。