「なっ……南風、
 なにもあんな言い方しなくても」


 それに……。
『俺の女』って……。


「それにしても、
 なんで私がここにいることわかったの?」


「昼休みになったとたん彩音が教室を出ていくところを見かけて。
 いつもなら、すぐに友達と弁当を食べるはずなのに。
 パン購買かとも思ったんだけど、方向が違うから」


 確かに。
 南風の言う通り。
 私は昼休みになったら、すぐに友達と一緒に弁当を食べている。


「だから、
 あとを追った」


「追ったって……」


 一体何のために。


「そうしたら……
 彩音が……告られていた……から……」


 だからといって。
 若村くんに私のことを『俺の女』と言うのは。
 それは、かなりおかしくない?

 まったく。
 南風は。
 どういうつもりで、そんなことを言ったのか。

 私のあとを追ってきてまで言うことなのか。

 それに。
 私と南風は。
 幼なじみで……恋人……ではないのだから。

 昼休みになって、どういう行動をしようが南風には関係ないのでは……?



 昼休みになって、すぐに教室を出たのは。

 今日の朝、下駄箱の中に四つ折りにされた紙が入っていて。

 その紙を開いて見たら。
【昼休み、体育館裏に来てください。
 お話したいことがあります。若村真郷】
 そう書かれていた、から。


 若村くんは一年生のとき同じクラスだった。
 知らない人ではないので会いに行くことに迷いはなかった。

 ただ。
 まさか想いを告げられるとは思わなかった。



「……もう無理」


 ……?