胸の鼓動が。
 激しく高鳴った。


 私の顔と太鳳くんの顔の距離が。
 少しでも動いただけで。
 触れ合いそうに……。

 太鳳くんの美し過ぎる顔。
 はっきりと見える。

 私の瞳と太鳳くんの瞳が。
 引き合うように見つめ合っている。

 さらに高鳴る胸の鼓動。


 どうしよう。

 まずい。
 このままでは。

 だから。
 早く。
 離れなくては。
 太鳳くんから。

 そう思っているのに。
 身体が動かない。

 極度の緊張で。
 身体が固まってしまっている。

 心の中では。
 緊張とパニックで忙し過ぎるくらいバタバタと走り回っている。

 それなのに。
 どうして身体は思うように動いてくれないのっ。



「……まずい……」


 そんなとき。
 太鳳くんが口を開いた。

 のだけど……。


「このままでは……」


 太鳳くんが……。


「……彩音のことを……」


 熱を含んだ瞳で。
 頬から耳。
 そして。
 髪を撫で……。


 ドキッ……。


 太鳳くんに触れられて……。

 止まらない。
 ドキドキが……。


 太鳳くんの顔が。
 より近付き……。

 唇と唇が。
 触れ合うまで。
 あと、わずか……。