消し忘れはないだろう。

お昼、リビングで、魔界の衣装に着替えて
ぼーっとしていると

「姉さん。迎えに来たよ」

「ありがとう。廻」

廻の手を取ろうとしたときだった

「誰の許可を得てこいつに触ろうとしてんの?」

「何で?」

だって、まだ、学校のはずじゃ・・・

「奈未?」

「あたしは、ここにいちゃいけない」

「ここにいちゃ行けないって何?」

廻の手を引きはがすように
後ろに引っ張った悠翔君

悠翔君の表情は心なしか少し怒っているように見えて

「俺から離れるな」

え?
どうして?
そんな事、今更言うの?

「無理でしょう。奈未はすでに婚約する準備が出来てるんだから」

「・・・っ」

好きだから
「バイバイ」

悠翔君の腕の中から抜け出そうとしたとき
余計に力が入ったのが分かった

「バイバイってどういう事
婚約するってなんだよ?」

「奈未は、君と正式な婚約がなかったら
別の婚約者と正式に婚約することになってる。
奈未もそれについては了承していることだ」

「は、ると君?」

「お前は俺の婚約者だ。他の男に尻尾を振ってんじゃねぇ」
「つーか。俺はお前を手放す気はない」
ドキっ
どうして?
今になって、そんなことを言うの・・・?


「遅いと思って迎えに・・・」

善・・・

「善。諦めろ」

「は?」