『あんたも本とか読むのね』

『これだけね。……なんかこれ読むと、ここにいてもいいんだって言われてるような気がして』



『へえ、『雨空のしたで』?』

『そう』



そんな会話をして、棚を通り過ぎて行った2人。わたしはその姿を何となく目で追っていた。




『あ、ほらあったわよ。雑誌』

『うわ……本当に売ってんだ』

『もっと喜びなさいよ。表紙なんてそう簡単に出来るものじゃないわよ』

『はは、そーだね』




何を話しているのかは分からないけれど、2人を少しだけ見つめる。それから、本棚の背表紙に目を走らせた。