この本に出会ったのは、本当に偶然で。


この学校に転校してくる前の高校1年生の私は、人生のどん底で。


私はこの世界にいらないんじゃないか、なんてことまで考え出して、下を向いたままショッピングモールに入った本屋にいた。


特に本を読むのが好きだったわけじゃない。

ただ、ぼーっとして歩いていたらたまたまたどり着いたのが本屋だっただけだ。




『……あ、この本懐かしい』




偶然通りかかった棚の前で、そんな声が聞こえた。

顔は見なかったけれど、同い年くらいの男の子がある本を手に取っていて。

その横で綺麗な女の人が、その本を覗き込んでいた。