「私、絢斗くんのおかげで学校来るの嫌じゃなくなった」



本を引き出しに戻して、絢斗くんの座るソファーに戻る。

絢斗くんは少し目を細めて、「そう」って笑った。



『雨空のしたで』を見て何だか懐かしくなって、絢斗くんの隣に座って話し始める。




「絢斗くんって、いつからこの本が好きだったの?」

「いつだっけ、中学生とか」

「そうだよね」



この本は子供向けだから、私みたいに高校生になってから好きになった人はなかなかいないかもしれない。




「私は初めて読んだの、高校生の時なんだけどね」




いつもだったら自分の昔の話なんて、絶対にしないけれど。

だけど絢斗くんがいつになく優しい顔で私を見るから、ついこぼれてしまう。


絢斗くんもいつも面倒くさそうな顔するくせに、今日はどうしてそんなに優しい顔してるの?