「……そのスマホケース」
絢斗くんが立ち上がらないから、私も立ち上がるタイミングを逃してしまって。
戸惑っている私のスマホケースを見て、絢斗くんが口を開いた。
「あ……これ、好きなイラストレーターさんで」
「どっかで見たことある……あ、北野」
と、私たちの横を通りかかった女の子に、絢斗くんが声を掛ける。
それが北野悠里ちゃんだったんだけれど。
「一緒じゃん、スマホケース」
絢斗くんが私のスマホケースと悠里ちゃんのスマホケースを指差した。
え、と驚いて彼女を見上げたら、悠里ちゃんもパッと嬉しそうな顔をして私に近づいてきた。