「絢斗くん、本当にこれ好きなんだ……」

「嘘ついてどうすんだよ」

「そう、だよね」



なんだか感動して、胸が熱くなる。

私たちが出会った瞬間のことを、思い出した。










半年前、春。



あれは私がこの学校に転校してすぐのことで、同じクラスだったにも関わらず絢斗くんの顔も覚えていなくて。

というか、ずっと下ばかり向いていたから、正直誰の顔も覚えてなかった。


人と関わりたくなくて、1人で卒業しようと思っていた。

大切なこの本1冊だけをお守りみたいに手に持って過ごしていた。