「すれば?」
「え……」
「いーよ、して」
余裕たっぷりの顔で、私を見下ろす。
絢斗くんからはしてくれないらしい。
意地悪だ、本当に。
だけど私だってやられてばっかりじゃないよ。
なんだか胸が痛いから。
きみが他の誰かとカフェに行くのかとか、この家には私のほかに誰か来るのかとか、紗英さんと電話はしたのかとか。
そういうこと全部、きみの中毒性のある毒で消したいから。
そっと顔を近づけて、その薄い唇に触れて、舌でなぞって。
少し目を開けたら、驚いた顔をした絢斗くんの目が映って、嬉しくなった。
入ってきた絢斗くんの舌を軽く噛んだ瞬間、ぐ、と体が押されて。倒れた上半身が、ソファに沈んだのがわかった。