「できたよ、ハンバーグ」
お皿に可愛く盛りつけたハンバーグを持っていったら、「美味そうじゃん」と喜んでくれた。
この笑顔は、なんだか絢斗くんの子供っぽい部分みたいで好きだ。
いつもの大人で、掴めない絢斗くんのことも、どうしようもなく好きなんだけれど。
ハンバーグを食べて、並んでソファーに座る。
ふたりの間に置いてあった絢斗くんのスマホが、メッセージの受信を知らせて光った。
反射的に視線を向けてしまって、
『美緒:明日の撮影場所の近くに美味しいカフェあるけど行かない?』
モデル仲間なんだろうか。そんなメッセージを見てしまって、目を逸らす。
……私の知らない世界に絢斗くんはいて、私の知らない交友関係がたくさんあって。
私は絢斗くんにとって、どのくらい大きな存在でいられるんだろうか。
絢斗くんは、隠そうともしないで、動揺もしないで、当たり前のようにスマホを取って、少し操作して、またソファーに置いた。
なんて、返事したんだろう。そんなことを聞く勇気もなくて、何も考えたくなくて。