「絢斗くん、ご飯できたよ」
ふたり分の親子丼を持ってリビングに戻ると、絢斗くんは寝てしまっていた。
「……寝てる」
お皿をテーブルに置いて、起こさないようにそっとソファーに近づく。
長いまつげが、陶器のように綺麗な肌に影を落としていた。
昨日は撮影だって言っていたから、疲れてるのかもしれない。
それなのに私と会ってくれて、嬉しい。
この人が私の彼氏だなんて、未だに信じられない。
──彼氏って、言っていいのかよくわからないけど。
今日だって、メッセージじゃなくて直接「今日遊ぼう」って誘ってほしかった。
周りの人にばれないように時間差をつけて学校を出るんじゃなくて、一緒に絢斗くんの家まで帰りたかった。
放課後にコンビニに寄り道なんかして、アイスを食べたり、そういう恋人同士みたいなことがしてみたかった。
……なんて、ワガママかなぁ。