「今だったらワガママ聞いてやるけど」
「っ……ドラマで紗英さんとするキスより、甘いのちょうだい」
「へえ、可愛いこと言えるじゃん」
絢斗くんは満足げに笑って、やっと唇にキスをする。
「いつもしてるけどな」
ふ、と笑った絢斗くんの顔はとびきり優しくて、もう不安げじゃなくなった私の顔に、少し安心しているように見えた。
もしかしたら、だけど。
なんでもないことみたいに報告したのも、今こうして甘やかしてくれているのも。
絢斗くんなりに、紗英さんとドラマに出ることを私にどうやって伝えるのか、考えてくれたのかもしれない。
……まあ、私の妄想かもしれないけれど。