絢斗くんは何も言わない。
そのままキッチンスペースに向かって、今日来る途中に買ってきた材料を使って親子丼を作った。前に来た時に使った卵が残っていたから。
その間、別に拒否した私を責めることもなく、絢斗くんはソファーに座ってスマホを見ていた。
……別に、キスの先に進んだっていいんだけど。
むしろ初めては、大好きな絢斗くんがいいんだけど。
それでも、それが済んだら飽きて捨てられてしまうんじゃないかとか。
もっとスタイルがよくて綺麗なモデルの女の子たちに囲まれているんだから、幻滅されてしまうんじゃないかとか。
絢斗くんは私のこと好きじゃないのにそういうことしちゃうのってどうなの?とか。
色んな思いが渦巻いてしまって、どうしてもその手を受け入れることができないんだ。