赤い家に着くと煙突から煙が出て、庭にはランタンが綺麗に置かれまるで星のようにキラキラと家を囲むように光っていた。

「ただいまー!」

クロエは勢いよく家に入り料理の準備をしているママの背後から抱きしめた。

「ママ!ただいま!薬もらってきたよ!」

「あら、おかえりなさい。えらい子ね。今日はクロエの好きなシチューとバケットよ」

「やったー!」

「パパとラビィ呼んできてくれるかしら?まだ仕事中だと思うの。」

「えー...うーん、わかったよ〜」

クロエは嫌そうな返事をし一度家の外に出て裏庭の地下に繋がるドアを開いた。
地下はクロエが大嫌いな場所。薄暗くて寒くて階段もかなり急の石畳。螺旋のように降りていき少し硬めのドアを力強く開けた。

ギィ...

部屋はそこまで広くなくゼトおばさんの家の本棚とは比べ物にならないくらいの量の本があり、机には散らばった羊皮紙にはクロエには理解できない文字とグラフが書かれていた。部屋の中央には円で術式が書かれた錬金研究机が置いてあった。

「クロエか。もう夕飯か?」

パパの声がした。パパは高身長で気難しい性格。あまり笑顔を見たことない。

クロエ
「パパ!今日はシチューだよ!」

レビィ
「パパ?この術式なら第3形態火の序列封印式を解除できないかな?」

パパ
「どれ?見せてみろ....うーん....いやこれは無理だ。」


クロエの話を無視をし2人してクロエが理解出来ない事を言いあっていた。
負けずとクロエも無言の圧力をかけ、ようやく2人は懲りた。

家に入り、4人共座り会話をしながら食事をした。

クロエ
「ねえ!パパーパパー!パパが研究してるのって何の研究してるのー?」

パパ
「おっ!やっとクロエも俺の仕事に興味をもってくれたか!嬉しいな!」

パパは仕事の話になると笑顔になる。

パパ
「俺の仕事はな....」

ママ
「パパー?食事中は仕事の話はしないでって言ってるでしょー?」

レビィ
「パパは国から大事な依頼が来てるんだよ。その研究をしてるんだ。俺はパパの助手ってことさ。」

クロエ
「じゃあ私も助手になる!」

パパ
「よく言ったぞ!それでこそ俺の子供だな!」


家族団欒で楽しいひと時が過ぎクロエはママと食事の片付けをしていた。

ゴホッゴホッ


クロエ
「ママー?大丈夫ー?ゼトおばさんから薬貰ってるからちゃんと飲むんだよ?」

ママ
「ありがとうね。でも大丈夫よ?ほら!片付けしましょう!」

ママは昔から身体が悪く薬を飲む日々を送っていた。
ママを心配しながら眺めているとパパとレビィが庭のテラスで話しているのを見てクロエも興味があるようにそちらに向かった。


クロエ
「何話してたのー?」

パパ
「将来のことさ。ちょうどよかった。クロエもここに座りなさい。」

テラスの空いた席に座った。
テラスの机の中央にはロウソクがゆらゆら揺れていた。

パパ
「15年に一度行われる種族鑑定と適正職、適正属性を調べなければならない。全世界全ての種族の子供は近くの王国に行くんだ。ちょうどクロエも7歳だから行けるな。」

クロエ
「え?!じゃあメルーン王国に行けるのー?やったー!」

メルーン王国とは人間族の国王で貿易国家ともあり多数の種族が行き来しこのキール村もメルーン王国の領土となっている。

パパ
「一度その適正検査を受けたらもう受けれないんだ。だからあまり行くことのないメルーン王国の国王陛下を拝んだぞ。」

レビィ
「わかったよ。で、パパ。どうして適正検査を受けなきゃいけないの?」

パパ
「それはな、もしお前たちが優れた才能の持ち主だったら王国に仕える戦士となれるんだぞ」

ママ
「すごく名誉のことだわ。はい。パパ、丁度そのことについての手紙が来てたわよ。」

ママがみんなのコーヒーを持ってきてくれた。クロエはもちろんホットミルク。

パパ
「この手紙が来たということは明日にでも衛兵たちが迎えに来るはずだぞ。」

クロエ レビィ
「え?!明日?!」

レビィ
「かなり急だな」

クロエ
「ねえねえ、パパー?適正職って言ったよねー?」

パパ
「言ったぞ。」

クロエ
「その職にならないといけないの?」

パパ
「勿論そうゆうわけでもない。例えばクロエが戦闘職のメイジだと鑑定されても俺の研究の助手もできる、剣だって誰でも持てるなら振れるだろ?職業を勝手に決められたらたまったもんじゃないだろ?だがもし生成職、生産職といわれら冒険者になるのは厳しい。魔法も剣も使えないからなぁ」


クロエ
「じゃあ魔法使えない強い人はもう絶対魔法覚えたりできないの?」

パパ
「そこらへんは話がややこしくてな、また大きくなったら話してやるよ」

クロエは少しふて腐れたがママは笑いながらクロエの頭を撫でた。

レビィ
「俺はどんなこと言われてもパパと一緒に魔法研究を続けたい」

パパ
「クロエはどうしたいんだ?」

クロエ
「んー魔法とかよく分からないし痛いのも嫌いだなー」

ママ
「クロエはまあどちらにしても生成職か生産職に間違いはないわね」

パパ レビィ
「うん、うん、」

パパ
「明日は早いんだ。もう寝なさい。」


レビィとクロエは自分の部屋に行き眠りについたことをママは確認し、庭でタバコをふかしているパパの所に行った。

あたりは暗く小川が月に反射し光る様子を見ながらパパはタバコの煙をゆっくりと吐いた。

ママ
「あなた、明日の適正検査どう思う?」

パパ
「なんともないさ。クロエのことか?心配ないだろ。この世界の掟だからな。クロエだけ隠すこともできないだろ。」

ママ
「うん...でも....」

パパ
「大丈さ。何があってもクロエはうちの子だ。」

ママ
「そうよね...」

あたりは暗くテラスのロウソクがゆらゆらと揺らめいた。