「、、、、さい」

「、、きなさい」


「クロエ?起きなさい」

落ち着いた声。


「朝ごはん食べないの?ママ食べちゃおっかな〜」


夢から覚めると金髪で目は色素が赤色のママがそこにはいた。

「クロエおはよー。髪とかしてあげるからドレッサーに座りなさい。」

使い古したドレッサーの前に座り、腰まで長い赤い髪をクシでとかしてくれる。これが日課だ。

「ママー?どうしてママとパパは綺麗な金色の髪なのに私だけ赤い髪なのー?」

ママは笑うとクシャッと困った顔をする癖でこう言った。

「あら、クロエの髪は夕日みたいで綺麗だけどなー?」

「ママ!この前はオレンジみたいで美味しそうって言ってたよ!」

こんな他愛のない会話をしながら小さくて可愛い小窓の外から小鳥のさえずりが聞こえ、小川がキラキラと光るのが寝起きにはとても眩しく見える。

ママやパパ、兄の4人家族でクロエ以外の3人は綺麗な金色の髪。似ていると言えばクロエはママの透き通った赤色の目と雪のような白い肌だった。
兄のレビィはパパ似で海のような綺麗なマリンブルーの青い目をしている。

「ママ!着替えるからすぐ行くね!」

クロエは嬉しそうに黄色のタンスから紺色のワンピースを手に取り早々と着替えた。

「あら、今日も紺色なのね。じゃあ紫色のワンピースなら紫色のカチューシャもつけましょうね。」

ママは嬉しそうに7歳のクロエの届かないところからカチューシャを取ってクロエの頭につけてくれた。

「ママ!ありがとう!!」

クロエは走ってリビングに走っていく。


リビングには美味しそうなアップルパイが焼けた香りが漂っていた。


「クロエいくらなんでも寝過ぎじゃねーか?またオネショでもしたのか?」

そう言いながら短髪でも寝癖が付いて変でそれでも綺麗な金髪の髪色をした兄が言った。


「違うもん!!変な夢を見たんだよ!!レビィには教えないもんね!!」

甲高い声で間に入るようにママは


「あらあら、クロエはまた怖い夢を見たのね。ほら、朝ごはんにしましょう」


レビィはクロエより一回り大きな兄で身長も歴然の差。ただ妹思いで優しく頼れる存在。
でもたまにムカつくことを言ってくる。

レビィは座り、机の中央に置かれたカゴの中から裏庭で取れたリンゴを頬張った。


「ママ。俺今日は親父の所にいくよ。」

レビィはそう言い玄関から出ようとし
それを後ろからママは


「そうなの?じゃあお父さんに今日は早く帰るように言ってくれるかしら?」

「ああ、わかった。クロエ、いい子にしろよ。」


そう言われてクロエは無言で分かった。と言わんばかりに舌を出した。
それをフフッと笑いレビィは早々と玄関から飛び出した。

クロエの朝ごはんはいつも同じであたたかいホットミルクとママと一緒に焼いたクッキー。
クッキーをミルクに浸して食べそれを眺めながらコーヒーを飲むのがママは好きみたい。

「ママ!今日はねー!ゼトおばさんの所に行ってきてもいーいー?」

それを聞いてママは

「それなら玄関に置いてあるカゴも一緒に持っていってくれる?うちで取れたクリープリーフなの。それといつもの薬をお願いするわ。」

「わかった!ママ!」

クリープリーフはうちの近くの小川の周りにしか生えない細長くて緑色で中央に赤い線が3本ある葉っぱだ。
ゼトさんのお店は薬屋で回復薬を主に売っている。そのクリープリーフは回復薬を作るには欠かせない葉っぱらしい。


「ママ!行ってきまーす!!」


クロエそう叫び勢いよく家から飛び出した。
家から出るとママが綺麗に手入れした花壇の道を通りすぐには小川の白い小さな橋を渡る。

橋の上で小さな魚が泳いでいるのを見て微笑んだ。


カサカサッッ


「ん?」

ママのお気に入りの薔薇で絡まった柵から音がした。
また野ウサギが迷って家にでも入ってきたのかな?クロエは気にしないことにした。


「おや、クロエちゃん。今日もお使いかい?いい子だねぇ」

そう言ってきたのは大きな鞄を持った亜人リザードマンの手紙屋さん。
堅そうな鱗が一つ一つ朝日を照らされて神々しく感じた。

「手紙屋さんだ!ねぇ、凄くまぶしいよ笑あ!ママはお家にいるよ!」

「そうかい、気をつけていくんだよー」

そう言ってカゴを持ったクロエを見送った。
クロエには少し大きなカゴ。クリープリーフが飛ばないようにママが手で編み込んで作った赤くて縞様のフキンで押さえてある。
ヒラヒラとそのフキンがなびかせながら歩いた。

この村は300人程度の住人で少し外れに赤くて煙突のある家がクロエのお家。商店街には距離はあるが歩けない事はない。


クロエは慣れたようにスキップをしながら商店街に向かった。