レイとゾーイはレイの父親に剣の扱い方や振り方を教わることになった。
レイの父親は元々かなり有名だった冒険者だったらしく未だに現役なくらい劣らずいい先生となった。

レイにはレイの父親に剣、盾、ゾーイには大剣を貰った。

「ほら、もう一回だ。レイ!ゾーイ!本気でこい!」

レイとゾーイは父親に真正面から突っ込み、木刀しか持ってない父親にコテンパンにされる毎日だった。

クロエとメルは誰も近寄らない森で修行となった。

ママ
「この辺でいいかな」

メルにもママは使ったことのない杖を渡しママが先生となり修行することになった。

メル
「クロエのママが魔法使えるって知らなかったー!」

ママ
「使えないわよ?ただ使い方を知ってるってだけなの。」

使い方が知ってて使えないではなく使わないって意味だってクロエは理解した。

ママ
「でも教えたことは内緒だよ?」

ママは笑顔でメルの口元に人差し指を添えた。

ママ
「二人とも杖を持って、メルは雷の性質をクロエには火の性質を杖に流し込む感じであの目の前にある木に杖を向けてみて。」

クロエ メル
「何もおこらない。」

ママ
「そしたらメルはこう唱えてみて。(雷よ)」

「クロエはこう。(炎よ。)」

メル
「いかずちよー!!!!」

クロエ
「ほのおよー!!!!」

メルの杖の先端から眩い光が出て木に直撃し、木はまるこげになった。
クロエの杖の先端から小さな火が落ちて足元の芝生が少し焦げた。

ママ
「うん。メルは上出来ね。クロエはもう少し火をイメージして唱えてみてね!」

メル
「いかずちよー!!!いかずちよー!!!」

まるこげになった木に何度も雷が直撃し周りの木にまで火が移りだした。

ママ
「メル?メル?もういいの。あと、叫ばなくても心の中で唱えるだけでいいからね?」

クロエとママはメルの激しさに少し引き気味になった。
ママはクロエに小声で囁いた。

ママ
「2つの属性扱えるのは滅多にいないんだよ?」

クロエ
「え、そうなの?!」

ママ
「クロエの場合、闇が8で火が2という感じで扱えると思うの。だから火を扱うのはクロエの場合難しいのよ。でも頑張ればメルのようにバンバン魔法を使う事が出来るわよ。」

クロエ
「頑張ってみるよ!」

ママ
「いい子ね。メルと競い合い助け合いながら共に旅をしてね!」


クロエとメルは2人きりでたまにママの助言を貰いながら毎日森にこもった。
そして5ヶ月が過ぎクロエはメルーン王国で冒険者になることを国王に知らせに行くことになった。

ママ
「レビィに会ったらたまには帰りなさいって伝えて!あと国王様にはちゃんと言葉遣い気をつけるのよ!」

クロエ
「はーい!んじゃ行ってきまーす!」

クロエはキール村から定期便のメルーン王国まで行く馬車に一人で乗り向かうことになった。
御者でもある衛兵は毎日見る顔でクロエは昔から知ってる顔だった。

御者
「クロエちゃん今日は一人でメルーン王国かい?」

クロエ
「うん!冒険者になること国王様に伝えに行かなくちゃ!」

御者
「国王様悲しむだろうなぁ。1ヶ月に一度メルーン王国に行ってるとはいえ何日も何ヶ月も何年もクロエちゃんに会えないのは誰もが悲しいよ....」

クロエ
「ちゃんと国王様には手紙書くしみんなの前で読んでもらうようにするから!」

御者
「クロエちゃんは本当に優しい子だねぇ。」

馬車に揺られながらメルーン王国に向かった。とても快晴で一ヶ月に一度でもこの大自然の風景を見るのは心躍る一日となっていた。

メルーン王国では必ず買うものがあった。
屋台で売っているクロエの好物の串に刺してあるメルーン王国名物のカラト焼きというお肉。
羊の肉を薄く切り丸めて中にはナヤという木のみがすりつぶしたものが入っておりそれをグリルで焼いた庶民の定番の軽食だった。

クロエ
「おじちゃーん!一本ちょうだい!」

「クロエちゃんか!おーおー可愛くなったの!ほら!もう一本おまけだ!」

いつもこうやって2本くれる。
クロエは村だけではなくメルーン王国の屋台や店までも人気者となっていた。

クロエ
「おじちゃん私冒険者になるからもうこれなくなるの。」

「それは寂しくなるねぇ。」

クロエ
「また来るからその時もサービスお願いね!」

「あいよ!いい旅をクロエちゃん!」

クロエは路地に入り噴水のあるベンチでカラト焼きを食べた。
メルーン王国の国民は皆笑顔で奴隷制度を無くし1000年間戦争のない平和な民主主義国家で何百という国の中でも住みやすい国として有名だがクロエにはただ一つ不満があった。
物知りなゼトおばさんに聞いた話、この世界には裕福な平和な国(光)があっても戦争や奴隷制度、侵略、支配、抑圧する帝国主義(闇)が数々存在すると。
裕福で平和な国で拠点として冒険したって任務すら少なく衛兵に任せれば国民として生きたほうがずっと平和だと知っていた。
だからパパが言う違う大陸から新たな人生をスタートをするのはいい話だった。

「にゃあ」

クロエ
「!」

路地から出てきたのは真っ黒の毛で薄汚れた小さな子猫だったり

クロエ
「あららーこんな汚れちゃってどこからきたの?」

「にゃあ〜」

目の色素が赤くクロエと同じ色の目だった。

クロエ
「お腹すいたの?もう一本あげるから食べな?」

クロエは小さな子猫を撫でながら食べる様子を眺めた。

クロエ
「お腹すいてたんだねぇ。お全部食べ?」




クロエ
「あら、子猫さん。」

いつの間にか子猫はクロエの膝の上で丸まって寝てクロエも気がついたらうたた寝していた。

クロエ
「やば!!宮殿行かなきゃ!また一緒に遊ぼうね!」

子猫は飛び起き走り去るクロエの後ろ姿をあくびしながら伸びをしついていった。

クロエ
「だめだよ!ついてきちゃ!」

クロエは立ち止まった。

クロエ
「ママは?」

「にゃあ」

クロエ
「そっか。迷子さんなの。んー」

子猫はクロエの細長い足にすりすりした。
クロエは子猫を抱っこした。

クロエ
「一緒にいこっか。ママいないんだったら私がママになってあげるよ!」


クロエは子猫を抱いて連れて帰ることにした。


クエル
「王、クロエ=ナーヴァのお見えです。」

バミリオ王
「やっときたか!1ヶ月に一度の最高の日じゃ!フェルト!フェルト王妃はおらんか!」

衛兵
「すぐ呼んで参ります。」

ガチャ...

バミリオ王
「クロエ!見るたびに美しくなっていくの。」

クロエ
「まあ!お上手ですこと。オホホホホ」

バミリオ王
「そんな言葉どこで覚えた!!」

会うたびこんな茶番をするのが何よりクロエは楽しかった。
玉座に座ったバミリオ王は茶番に付き合うも歳を重ねるごとに威厳をなしこの大陸をまとめた王という佇まいは今もなおオーラをまとっていた。

バミリオ王
「で、今日は何して遊ぼうかの。」

クロエ
「違うよ!大事なお話だよ!」

バミリオ王
「なんと、やっと王女になる決意を決めたか。」

クロエ
「王女なんてやりませーん。レビィにでもやってもらったらいいじゃん!」

バミリオ王
「あやつは王ではなく聖騎士を目指しておる。王の座は座らんだろうの。」

クロエ
「どうかな。レビィはどこー?」

バミリオ王
「任務に出ておるぞ。で、話とは?」

クロエ
「私、冒険者になろうと思って!」

ガチャ....

フェルト王妃
「まあ!クロエー!!会いたかったわよ!」

バミリオ王
「フェルト。静まれ。わしとフェルトだけで聞きたい他の者、退出してくれ。」

衛兵、クエル、使徒など退出した。

フェルト王妃
「どうしたのよ?せっかくクロエきたんですよ?」

バミリオ王
「クロエが冒険者になりたいと。」

フェルト王妃
「....だめ。絶対だめです!!」

バミリオ王
「わしらが口出すようなことではない。確かにお前さんが小さい頃から良くしてやったが冒険者などと言うとは...何故冒険者になりたいんじゃ?」

クロエ
「この世界を旅をしてみたい。広い海の向こうを見てみたい。」

本当のこと、ママの事は言わなかった。

バミリオ王は少し黙りやっと口を開いた。

バミリオ王
「行ってきなさい。」

フェルト王妃
「あなた!」

バミリオ王
「ただ今から言う約束は絶対に守れ。自分の種族、属性を隠し通すこと。お前さんの母親のことは誰にも話さぬこと。1ヶ月に一度は手紙を書くこと。」

バミリオ王
「もう一つ。よい旅をの。」

バミリオ王は笑顔になった。

クロエ
「王様...約束絶対守る!」

バミリオ王
「何度言えばわかるんじゃ!お父様と呼べ!」

クロエ
「お父さんだーいすき!」

バミリオ王はデレデレした。

フェルト王妃
「クロエ...大丈夫?あなたなら立派な王女になれるのよ?」

クロエ
「王女は....ちょっと...」

バミリオ王、フェルト王妃は何故そこまでして平民のクロエにこだわるのか全くわからなかった。幼い頃から貴族の振る舞いもわからず外で元気いっぱいに走り回る平民の小さな女の子に王女をさせたがる意味も分からず。

バミリオ王
「まあまだわしは現役じゃ。この座はまだ誰にも譲らん。」

フェルト王妃はクロエに近寄り、そっと抱きしめた。

フェルト王妃
「クロエ。あなたは私の最愛なる光。純白の神エリザフィール様のご加護があらんことを。」

バミリオ王
「今から長旅になるのじゃろ?少し持って行きなさい。」

クロエ
「おうさ...お父様!大丈夫!いつも言ってるでしょ!お金も要らないし服も要らない。」

バミリオ王は少し落ち込んだ。
クロエは玉座に座ったバミリオ王に近寄り抱きしめた。
ずっと大きな身体でとても暖かかった。

クロエ
「大丈夫よ。お父様。心配してくれてありがとう。」

そしてクロエは子猫を抱いて一礼をした。

クロエ
「お父様、お母様、行ってくるよ!」

満面の笑みを浮かべて城を出た。


帰る頃は日が沈み綺麗な満月だった。
帰りの馬車の中で揺れながらクロエの膝の上で丸まって子猫は寝ていた。

クロエ
「今日は綺麗な月だね。君の名前はルナにしよっかな。」

パッと子猫は起きクロエを見て名前が気に入ったのかにゃあと鳴いた。

クロエ
「あれ、気に入った?ルナに決定だよ!」

クロエは優しくルナを撫でた。

クロエ
「帰ったら綺麗にしてあげるからね。ミルクも一緒に飲もう。きっとうちが気にいるよ。」