「ありがとう」

僕はお礼を言い、カクテルを飲み始める。美しい赤いカクテルに一口飲んだだけで酔わされそうになるんだ。

このバーを見つけたのは、本当に偶然だった。接待でこの繁華街を訪れた際、このバーを見かけた時に胸がドクンと音を立てたんだ。まるで、見えない目に見つめられているみたいに……。

「お隣、いいですか？」

カクテルを飲んでいると、隣にコトンと音を立ててカクテルガラスが置かれる。「カクテルの王様」とも言われているマティーニだ。そして、僕が少し上を見上げれば艶やかな長い髪を揺らした大きなキャットアイの美しい女性がいる。着ているのは気品のある紫のミニ丈のドレス。太ももがチラリと見え、僕の理性がグラリと揺れた。

「……今夜も来ていたんですね。いつも僕がバーに来るといるじゃないですか。猫間（ねこま）さん」

「うふふ。もしかしたら何かの運命かもしれませんね」

そう言い笑うのは、このバーで知り合った猫間さん。モデルのようにスタイル抜群で、バーにいる多くの男性の視線を釘付けにするほどの美貌を持っている。猫間さんは僕がバーに来ると必ずいて、こうして一緒に飲む中だ。