花火を楽しむ余裕なんて全くないまま、気づけば終演のアナウンスがかかり、一気にたくさんの人が帰り支度を始める


奈緒ちゃんたちとは行きに集まった公園で待ち合わせの約束をし、悠生くんと人波に乗って出口を目指す


ようやく悠生くんが後ろにいる状況から解放され、ほっとしたのも束の間、また当たり前のように手を繋がれる


「ここまで来て迷子になったら困るから」


まるで言い訳のように紡がれる言葉


もしかして悠生くんも恥ずかしがってる…?
でも、悠生くんたちにとっては普通のことなんじゃないの?
それに、恥ずかしいのにわざわざ手を繋いでくれるなんて…もしかして、


まさか


悠生くんはいつもいろんな人に囲まれてる


その中には私よりずっと可愛くて、オシャレも頑張ってる女の子だってたくさんいる


ちょっと仲良くしてもらってるからって、彼も同じ気持ちかもしれないなんて、自惚れだ


そもそも、悠生くんは簡単に可愛いとか言えちゃう人なんだった


一瞬だけ浮かんだ気持ちをすぐに振り払って、人に押し流されるようにして出口へ辿り着く


公園が見えたところで、悠生くんの手が離れた


「咲!よかった〜ほんっとうにごめんね!」


公園の入口で、奈緒ちゃんがこちらに気付いて駆け寄ってくる


「ううん。奈緒ちゃんたちこそ、大丈夫だった?」


「うん!花火も、穴場見つけてちゃんと見れたから」