「奈緒うるさい。ぶつかるよ。迷惑」
樹くんが奈緒ちゃんの手を引いて、その拍子に腕が解ける
この人混みでは4人並んで歩くのは迷惑になりそう
そう思って、少し後ろにいた悠生くんの隣に並ぶ
「浴衣、いいじゃん。かわいい」
「え、あ、ありがとう」
かわいいって…!
言われ慣れない言葉に顔が熱くなる
悠生くんは結構簡単にそういうことを言う
きっと人たらしってやつだ
私も「悠生くんもかっこいいよ」ってくらい言えたら良かったのに、そんな余裕はなかった
会場が近づくにつれ、少しづつ露店も人も多くなっていく
ただでさえ低身長の私の視界は、すぐに人の背中で遮られてしまって、少し先を行く奈緒ちゃんと樹くんの背中を追うのが大変だ
「ん」
必死に顔を上げてついて行っていると、ふいに隣から差し出される手のひら
どうしたんだろう?
意図がわからず悠生くんの顔を見上げると、ふいっと目を逸らされ、なかば強引に手を取られる
「手、繋いでおけば少しは安心だろ
神原さん小さいから見失いそう」
手…!?繋ぐの!?
慌てるけど、もう手は握られてしまったあとだ
やばい…手汗かいちゃいそうだよ…
状況が把握出来ず、ただ心臓がバクバクと暴れている
いや、私が迷子にならないようになんだろうけど…!
それでも、男の子と手を繋ぐのなんて初めてで、変な汗をかいてしまう