「ごめん、奈緒ちゃん!お待たせっ」
夏祭り当日
会場から少し離れた公園で待ち合わせた奈緒ちゃんの元へ急ぐ
混雑を予想して早めに家を出たけど、想像以上の人混みに約束の時間よりも遅れてしまった
慣れない浴衣と下駄で少し歩きにくい
中学生の頃に買ってもらった、生成り色地にえんじ色の椿があしらってある浴衣と、同じくえんじ色の帯
髪はサイドだけ編み込み、右耳の辺りに新しく用意したつまみ細工の髪飾りをつけた
「全然!毎年だけど、人すごいね。
てか咲、浴衣かわいいーっ」
「奈緒ちゃんのもすっごく可愛い!」
藍色の生地に淡いピンクで朝顔があしらってある浴衣に黄色の帯が映えて、奈緒ちゃんのイメージにぴったり
いつもはポニーテールにしている髪も低めの位置でお団子にまとめてある
「ありがとう〜」
「人が増える前に行こっか?
屋台回ったりするよね?」
「あ、ちょっと待って」
たくさん出ると噂の屋台を回るのも楽しみにしていた私は奈緒ちゃんの手を取って急かす
しかし、なぜか引き止められて首を傾げる
「あのさ、」「ごめんごめん、お待たせ」
奈緒ちゃんが何か言いかけた時、後ろから聞き慣れた声が聞こえ、勢いよく振り向くと浴衣姿の悠生くんと樹くんが公園の入口に立っていた