「…はい、おしまい」
2冊も立て続けに読んだ上に、今まではこの場になかった顔とたまに目が合ったせいで緊張してしまい、喉がカラカラだ
「おつかれ」
読み聞かせに満足し、別のおもちゃの方へ行ってしまった子供たちを横目に、悠生くんが私の隣へ腰掛ける
「緊張した…」
「子供ら、すごい楽しそうだったよ」
「それならいいんだけど…」
さっきの十数分で一気に気力を吸い取られてしまった私は、ここから動く気にもなれず、座ったまま楽しそうに遊んでいる子供たちを見つめる
「すごいな、神原さん」
ぽつりと隣から聞こえてきた言葉に顔を上げるけど、意図がつかめず首を傾げる
「見て、奏汰があんなに笑ってる」
彼の目線の先にいるのは、退院してからほんの1ヶ月と経たず再入院になってしまった男の子
そういえば、あの子の笑顔は久しぶりに見たかもしれない
「さっきまで俺と遊んでても、全然楽しそうじゃなかったのに」
少し拗ねたような口調で「だから神原さんはすごい」と言ってくれる