思わずその挑発に乗りかけたけど、何とか踏み止まり、どうか樹が無理したりしませんように、と星に祈るような気持ちで言葉を続ける
「悠生のことも心配だけど、樹もあんま無理しないでよ。相談くらい聞くから。1時間100円で」
「金取るのかよ」
結局、ストレートに伝えるのは恥ずかしくて、照れ隠しをしてしまった
それでも真意は樹に届いたようで、「サンキュ」と笑ってくれた
悠生が一番辛いのはあたし達ももちろん分かってるし、事情を知っている人ならみんなが悠生を心配してくれる
だけど、それを支える側も案外きつい
そしてそれは見落とされやすい
これは、小さい頃からずっとあの双子のそばにいたから気づけたことだった
樹自身でさえ、いつも悠生のことばかりなんだから、あたし1人くらいは樹を一番に考えてたっていいんじゃないかと思う
「じゃあな」
「うん、また明日」
家の前で別れて、お互いに背中を向けて玄関を開く